エマニュエル・トッドの予測通りトランプ勝利

2016 , 11月 09 日 水曜日

エマニュエル・トッドの予測通りトランプ勝利

エマニュエル・トッドの予測通りの勝利

この秋、来日したエマニュエル・トッドは、「トランプがどんなバカなことをやってもトランプが勝つ可能性は決してなくならない」「トランプ現象は、中間層による革命だ」と語った。

アメリカの貧困

トランプ現象は中間層の革命だと彼はいう。
中間層とは、大学に入っても卒業しないおよそ6割の男女で、トランプよりも理知的との定義だ。
その中間層の所得は1996年以降下がり続けている。そして同様に平均余命も1996年以降低下し続けていているのだ。同時期の黒人、ヒスパニック系の死亡率は低下傾向だが、彼らの死亡率だけが上昇しているのである。
死亡率上昇の要因は、アルコール依存、薬物中毒、慢性肝疾患原、そして自殺である。しかも中年世代は医療保険制度がないため、金がなければ治療の機会がない。

病気になっても治療できない

メディケイドが未整備の米国では、会社が保険を負担してくれなければ自己負担で医療保険に入らなければならない。低所得者層が医療を受けられない事態が発生するのだ。
Stan Brockが設立した歯科と眼科の途上国向け医療提供ボランティア「リモートエリアメディカル」は、近年、バージニアなど米国内で活動を行っている。隣のケンタッキー、ウエストバージニアは州の保険補助があり治療がでできるが、バージニア州は補助がない。「リモートエリアメディカル」の治療日程を聞きつけ、会場となる小学校での当日の受付は長蛇の列となる。前の日からテント持参で泊まり込む夫婦もいるのだ。
これが中間層の実体の一例だ。

怒りほど強い動機はない

「トランプの支持層はトランプを道具として利用している」「トランプ現象は、中間層による革命」であるとドッドは言う。

共和党の大統領候補予備選でトランプが勝利したのは、共和党エスタブリッシュメント、東部エスタブリッシュメントに対して不満を蓄積しているトランプ支持層がいたからだ。その核になったのは中間層だ。
民主党のヒラリーとサンダースの予備選も、エスタブリッシュメントと中間層-中間層予備軍の戦いだった。ヒラリーがやっと勝ったが、居残り続ける飲み屋の客などとからかわれたサンダースのスタンスは最後まで支持され、大統領選への支持を取り込むことに時間がかかるほどだった。。
そして大統領選も、やはりエスタブリッシュメントと中間層の戦いになった。

中間層の鉄槌

自分たちに有利になるよう次々とルールを書き換え、自分たちがより豊かになるよう社会の仕組みを変えて来た人口30%にあたる大卒以上のエリートに対して中間層が戦いを挑んだのだ。

メディアを信用しない中間層は世論調査にも協力しない。投票率が上がったことから民主党に有利かとも見られたが、今まで諦めていた中間層の怒りの票だったのだ。これが隠れトランプ支持者、隠れトランプ票だ。
選挙速報番組に出演のキャスターの顔つきが次第に無表情になった様子は、蒼ざめるエスタブリッシュメントと重なる。逆に、いつになく引き締まったトランプの勝利宣言の顔が印象的だった。

トランプ勝利後に経済が動いた。VIX指数(恐怖指数)は前日比4割強の高水準になり、円が買われ軒並み株は下がった。
「俺たちの怒りを喰らえ」と中間層は溜飲を下げているだろう。
エスタブリッシュメントとの戦いに「トランプの支持層はトランプを道具として利用し」勝利したのだ。

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Tinsley Ellisのブルースがあう一日だった。
 
 
追)
翌日は市場は逆転し1%た。真夜中からダウの先物は6.5%あがった。金属、鉱山などのインフラ投資のトランプ銘柄が買われ、取引高は通常の二倍を超えた。
エスタブリッシュメントがエスタブリッシュメントたる所以である。
 

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