中国が恐れる一人の囚人 2
2010 , 12月 05 日 日曜日ノーベル平和賞を受賞した劉暁波(リウ・シアオ・ポー)氏(54)の妻、劉霞(リウ・シア)さん(49)も監視されている。当局の監視は自宅前で24時間行われ、すべての電話やメールは盗聴されている。当局の気にさわる内容を電話で話すと、北京市当局者の事情聴取が行われる。
劉霞さんは、劉暁波氏が受賞すれば自宅近くで取材に応じる意向を示していたため、自宅近くには約100人の報道陣が詰めかけたが、警官に排除され近づけなかった。朝日新聞が8日の夕方、電話取材で劉暁波氏の妻、劉霞(リウ・シア)さん(49)に、「劉暁波とすべての国内と海外の民主活動家たちの努力が無駄にならなかったことを大変うれしく思う。劉暁波が受賞を知ったら、とてもうれしく感じ、ほっとするだろう」というコメントを得るが、同時に「外に出て行くことはできない」、「(理由を)言うことはできない」と語った。その後、電話は通じなくなり、自宅周辺を警備する警察官は「すでに自宅にはいない。郊外に行った」と説明するだけだ。
劉霞さんの携帯電話は8日夜から電源が切れた状態になったが、9日午前には「契約解除などによる不通状態」に変わった。
のちの劉霞さん本人や関係者からの情報によると、平和賞受賞者発表直前の8日午後3時(現時時間)ごろ、数人の警察関係者が自宅を訪れ外出を禁止される。さらに警察当局から、自宅のある集合住宅前に集まった海外メディアと接触を行わないよう指示される。
その後、8日午後7時すぎ、突然服役中の劉暁波氏と面会させると言われ、取るものも取りあえず警察車両に乗せられ北京市内の自宅から暁波氏が服役中の遼寧省錦州市の刑務所に数人の警察関係者とともに向かったという。9日朝に錦州に到着したが、「面会は10日になる」と伝えられる。
劉暁波氏との面会でも、警察関係者がそばにつき自由に話ができない状態が続いていたため、受賞式について話すことができないと思われていたが、劉暁波氏は受賞について刑務所内ですでに伝えられていたという。
いつでも拘束できるよう家の前に車が常に止まる。行動は録画、会話は盗聴され、外出には当局の尾行者が付く。
電話、メールはすべて盗聴。手紙は開封される。携帯電話は許されたもの以外使えず、当局が勝手に遮断、解約する。電話やメールに気になる文言があれば事情聴取。相手も同様に事情聴取される。ネットの書き込みは遮断。Usenetも同様。
外出時の会話はすべて盗聴。旅行は不許可。許された地域以外は行けない。尾行者とはぐれれば、帰宅した玄関から連行され事情聴取。その間に接触した相手も同様に事情聴取される。
見えない檻の中でこづかれながら、常に観察、監視されている状態だ。
当局は劉霞さんの言動が海外メディアを通じ国内外に伝わることに、神経をとがらせて、外部との連絡を阻ばもうとしていたようだ。
8日夜に、劉暁波氏の受賞を祝おうと、20人ほどの人権活動家や弁護士らが北京市内のレストランに集まったところ公安当局が中止を命令し、抗議した何人かが連行された。
ネットでも規制が厳しい。平和賞を受賞した「劉暁波」の3文字が含まれたメールは遮断、ネットの掲示板も関連の書き込みは即刻削除する徹底ぶりだ。
なにしろ2010年11月のスパコンランキングのベスト3内の1位と3位のスーパーコンピュータをもつ中国であり、最近のコンピュータ技術の向上にはめざましいものがある。ダークサイドの技術も著しい。WikiLeaksで暴露された米国公電では、グーグルや政府系ネットワークへのサイバー攻撃は、中国政府が主導したと報告している。
中国国内のネットワークは政府の管理下にある。ノード/ルーターをモニターしてパケットをひろい、解析して処理することは難しくない。膨大なトラフィック量でも演算能力の高いコンピュータがあれば解析ができるのだ。